さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)

さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)

傷を抱えた人は、傷を抱える強さがあるから抱えて生きることができるのか、抱えるために強くなったのか...日本でも公開が決まって観てきた。抱えた傷の種類が「骨肉腫」「甲状腺癌stageⅣ」であったとしても、ありふれた、という言い方だと語弊を招くかもしれないが、これは二人の「ラブストーリー」だった。そのスタンスが私にとってはとても観やすくて、後に悲しみだけを残さない映画だった。


本作に出てくる「大いなる痛み」については、彼女が「死んだことがないのにこの作者は死がわかっているの」と言ったところから、私が大好きな本のひとつの「傷ついた物語の語り手」を彷彿させた。この本はある方から紹介していただいたのだが、ほんとに一度死もしくは痛みを作者が知っているように思える本だった。「大いなる痛み」の作者が、彼女へ「君はなぜ君が死んだ後の世界を知りたがる?この物語は主人公が死んだときに全て終わったんだ」と言うのだが、この意味もまた考えさせられた。


シガレットをくわえながら、火をつけない=攻撃力を持たせないなど、ガスのユーモアが素敵だった。
最後までユーモア溢れる人でした、と表現したかったけど実際はできなかった、そしてお葬式ではそう表現した、というこの作品全体の素直さ、正直さに「人間らしさ」を感じた映画でもあった。最後にガスのユーモアがある部分を思い出すのはガスの「生き方」だったように思う。日本語版ではやや表現が変わってるのでは、と思ったので、アメリカ版を購入して読んでいる。